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Luncheon Seminar

第40回 視覚失認・純粋失読

40回 視覚失認・純粋失読

平成30年12月13日、桔梗ヶ原病院リハビリテーション研究会Luncheon seminarを開催しました。講師は、当院リハビリテーション科の武田克彦先生(第40回 日本高次脳機能障害学会学術総会会長)。前回から引き続き、視覚失認の症例と純粋失読について講演をして頂きましたので、ご講演内容を報告いたします。

 

~視覚失認の患者DFの症例~

一酸化炭素中毒患者DFは意識を回復したが、見たものが分からないという症状を呈した。話をしたり、言われたことを理解することはできた。次第に色は分かるようになったが、母親を見ただけでは分からず、声を聞いて初めて誰であるか分かるという状態であった。物品を見せられてもその材質や色は分かるが、形は分からない。しかし触るとすぐ分かる。モデルは模写できない。

これらの症状から患者DFは、失語症はないものの、統覚型の視覚失認と考えられる状態を呈していた。MRIで調べたところ、両側の後頭葉の腹外側が障害されていた。その損傷部位は、腹側経路と言われている流れを含んでいた。一方、一次視覚野(V1)はおよそ保たれていた。

患者DFについて観察すると、形に基づいて何も正確に判定が出来ないのにも関わらず、患者は日ごとの状況に上手く適応して振る舞えることが分かった。例えば、鉛筆を空間の中で呈示して患者に捉えるように言うと、その鉛筆が垂直に呈示されている時と、水平に呈示されている時とでは、それを捉えようとする手指の形が、健常な人と同様に異なっていた。すなわち健常人と同様のスピードと巧みさで正しく把握できていたのである。

 

~形が識別できない状態なのに何故?~

患者DFに様々な方向のスロットを呈示して、そこに素早くカードを差し込む課題を行わせたところ下記のような結果となった。

  1. マッチング:見ただけでは正しい角度に合わせられない。
  2. コントロール:角度に合わせて手の形を変えることが可能。
  3. ポスティング:正しくカードを差し込む事が可能。

また、物に合わせて手を広げる幅を変える実験においても、DFはおよそ正確に変えることができた。このことから、腹側経路の障害では形の識別は困難だが、位置の感覚は障害されないということが分かった。

 

~Milner & Goodaleの主張~

【知覚のための視覚、行動のための視覚、両者は独立なのだ。】

今までの常識では、知覚と行為は、分かちがたく結びついており、対象を適切に扱おうとするなら、それをよくみなくてはならないということが定説だったが、腹側経路では形の識別、背側経路では位置の感覚(どこにあるか)を司っており、知覚と行動の為の視覚は独立しているということが分かった。

 

~純粋失読~

純粋失読とは、読字が選択的に障害されている病態である。音声言語の障害をほとんど伴わず、書字も概ね良好に保たれているが、自分で書いた文字が読めない。しかし、文字を指でなぞると少し読めることがある(Schreibendes Lesen)。日本人では多くの場合、漢字も仮名も読めなくなる。

~Dejerineの解釈~

1892年Dejerineは純粋失読の症例を詳細に調べ、その解剖学的な所見と合わせて報告した。Dejerineの症例では、後頭葉の舌状回および紡錘状回の白質と脳梁膨大部に病巣がある。前年にDejerineは失読と失書を有し、角回に損傷のある例を報告していた。このこととあわせてDejerineは、視覚野と角回を結ぶ繊維の損傷によって純粋失読が起こるものと説明した。すなわち、言語の視覚像の中枢(優位半球の角回)と視覚一般の中枢を結ぶ繊維の破壊によって失読がおきるとした。

 

~Geschwindの解釈~

Geschwindによると純粋失読は、右同名半盲+脳梁後部の損傷により、読み書きの中枢と言われる角回に言語情報が行き届かない事で起きると説明した。

 

~WarringtonとSchallinceの解釈~

純粋失読では文字数が増加する事に健常者に比べて認識までに時間を要した。WarringtonとSchallinceは、letter-by-letter readingの患者の検討よりsemanticとphonologicalというように分かれる前にword form systermが存在すると主張している。そして、患者の失読はword form systermの障害によると仮定するとよく説明できるという。word form systermとは、語形処理の機能の事で、文字の系列をよく知った単位と解剖し、それらの単位を視覚的にカテゴリー化するシステムであるという。そのシステムが障害される事で純粋失読が起こると考えた。

 

~Farah MJ とWallance MA の解釈~

Farah MJ ,とWallance MAは、純粋失読の症状を多数の対象物を迅速に認識出来ないのが原因と考え、「読み」を1つのモジュールと仮定しないと考えた。その根拠は、ほとんどの純粋失読患者は、読みの最中に文字を他の文字と誤って知覚する事が挙げられると主張した。

以上、武田克彦先生に「視覚失認・純粋失読」をテーマにご講演頂きました。次回は、平成31年1月17日に講演して頂く予定となっております。

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